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2010年10月 アーカイブ

ゴッホの生きた人生 7

ゴッホという人物は、何をやるにしても、およそ限度というものを知りません。


伝道師という仕事を極限まで生きようとしたように、今度は、この画家という新しい仕事を極限まで生きようとします。


ブリュッセルで半年ほど過した彼は、翌年の4月、エッテンの父のもとに戻ります。


彼は「デッサンは辛い困難なたたかいだ」と言い、ガヴァルニの「1本も線を引かぬ日は1日としてなく」ということばを思い起しながら続けられる彼の生活においては、生きることと描くことがほとんど同義です。


そしてこの緊迫したたたかいを通じて、彼は、おのれの絵画の本質的スタイルをとらえ始めたようです。


エッテンからテオに書き送った手紙のなかの、


「自然はつねにはじめは素描家に抵抗する。


しかし、それを真にまじめに受けとめようと努力するものは脱線することはないのだ。


逆に、この抵抗は克服の戦いのよき刺激となるのだ。


根底においては、自然とまじめな素描家とは一致する。


だが、たしかに自然は『掴みにくい』。それでも自然をとらえなければならぬのだ。


しかも、しっかりした手で。


ある期間、自然と取組み合いの格闘をしていると、やがて自然もおとなしくなってくるものだ」。

ゴッホの生きた人生 8

「ことに人物の素描は間接的に風景の素描に好ましい影響を与えてくれるのでいいものだよ。


頭を刈り込んだ1本の柳をあたかも1個の生きもののように描こうとするとき、


・・・実際、生きものに違いないのだが、その樹に注意力を全部集中して、その樹が生きてくるようになるまでやり続ければ、その周囲の事物はおのずから出来あがってゆくものだ」。


これらのことばからは、ゴッホが、おのれが辿りつつある道に関して、次第に確信を深めている様子がうかがわれます。


そればかりではなく、これらのことばは、この当時のゴッホのデッサンの、不器用で荒々しい手つきで対象の核心を一挙につかんだ、そのくせ一種独特の繊細さをそなえた特質をおのずから示していて、いかにも興味深いのです。


一家の者たちは、こういうゴッホの姿を見て、ほっとしたことでしょう。


従兄にあたる人気画家マウフェほどにはなれぬにしても、この仕事で何とか暮してゆけるようになれれば一安心というわけです。

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