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2010年07月 アーカイブ

ゴッホの生きた人生

ゴッホはボリナージュで、伝道師として献身的に働きます。


彼に必要なのは、貧しい坑夫たちと同じ生活をすることなのです。


彼は、石けんも使いませんでした。


下宿の部屋さえぜいたくすぎると考え、何ひとつ家具のない小屋で、炉のすみで眠りました。


昼は、坑夫たちの家を訪れ、あるいは坑夫たちとともに坑道の底まで降りてゆき、夜は、「毎晩100ページ」本を読みました。


子供のための学校を開いて、神はうやまうべきものであることを教えました。


4月16日に、近くのフラムリという町にあるアグラップ炭坑に爆発が起ったときは、ありったけの下着を破り裂いてほうたいを作り、油を買い、負傷者たちの看護に熱中し、医者も見はなした重傷者を自分の小屋に引きとって、ついにその命をとりとめさせました。


彼のいささか気ちがいじみたこのような行動に忠告した下宿の女主人に、彼は


「善きサマリア人はこれ以上のことをしたではないですか。


聖書を読んで感嘆するようなことをなぜ生活のなかで適用してはいけないのです」


・・・と答えたということですが、このことばは、彼の行動をつらぬくものを端的に示しています。

ゴッホの生きた人生 2

ゴッホのこの生活ぶりについて、母親は


「フィンセントの手紙にはたくさんの興味深いことが含まれていますが、これらの手紙はあの子がどんなに度外れなことをしているとしても、やはりあの子は貧しい人たちに暖かい関心を示しているのだということをはっきり証明しています。


このことはきっと神様の眼にとまらないはずはないでしょう」と語っています。


しかし、伝道委員会の眼には、彼のふるまいは、あまりにも常軌を逸した、伝道師としての体面をけがすものと見えたようです。


6ヵ月の期限が終ったとき、委員会は、彼の再任を拒否するのです。


彼は、メヘレンからブリュッセルに移っていたピーテルセン牧師の世話で、キュエムのフランク牧師を紹介され、自費でなおボリナージュにとどまることとなりますが、この再任拒否は、彼のなかに閉じようのない傷口を開いたにちがいないでしょう。


伝道師としても、彼は世間一般の道から決定的にはじき出されたのです。


それに、生活の問題があります。


自費でとどまるにしても、彼には収入をうるあてがなく、またもや父や弟に頼るほかはありませんが、頼りにしていた弟までが、いつまでも「年金生活者」のような暮らしを続けるのはやめてほしい、というのです。


翌年の8月、彼がキュエムからテオにあてた手紙は、人生からも宗教からも締め出された人間の、苦痛にあふれた叫びにほかなりません。

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